病弱研究者の日記

 病弱教育の対象となる代表的な疾患は,「小児慢性特定疾患」の対象となる疾患です。「小児慢性特定疾患」とは,子どもの慢性疾患のうち,長期間の治療が必要で,医療費の負担も高額になる疾患なので,治療の確立や普及がめざされ,医療費の負担が補助されます。対象年齢は,原則18歳までですが,状況によっては,20歳まで認められることもあります。ただし,それぞれの疾患ごとに,病状や治療内容などの基準が定められていて,同じ病名がついていても,対象となる場合と,ならない場合とがあります。

 その対象となる疾患ですが,現在のところ,11疾患(514疾患群)とされています。 11疾患群と514疾患群の違いが分かりにくいですが,11 疾患群とは、①悪性新生物、②慢性腎疾患、③慢性呼吸器疾患、④慢性心疾患、⑤内分泌疾患、⑥膠原病(こうげんびょう)、⑦糖尿病、⑧先天性代謝異常、⑨血友病等血液・免疫疾患、⑩神経・筋疾患、⑪慢性消化器疾患です。それぞれの病気の詳細は,改めて詳細に説明する予定です。

 この11疾患群はさらに細かく分類することができます。例えば,上記の①悪性新生物とは,一般的には小児がんを指しますが,一口に悪性新生物と言っても白血病,脳腫瘍,神経芽腫などに細かく分類されます。その他の10疾患群も細かな疾患に分類することが出来ますので,合計すると514の病気があるということです。

 上記の「小児慢性特定疾患」は,確かに,病弱教育を受けている子どもの中心となるものです。ただし,「小児慢性特定疾患」の対象とならない疾患も数多くあるため,上記以外にも病弱教育の対象となる子どもはたくさんいます。病弱教育を広くとらえると,医療を受けている子どもへの教育と考えることもできます。例えば,重症度によっては,アトピー性皮膚炎,うつ病などの心の病気も病弱教育の対象となる場合があります。また,例えば,スポーツをしていて複雑骨折をし,数カ月の入院治療が必要となった子どもは,院内学級で教育を受けることが可能です。院内学級で教育を受けている子どもは,病弱教育の対象となります。さらに,重症心身障害と呼ばれる,病気を抱えながら,他の障害も併せ持つ子どもも病弱教育の対象とみなすことができます。

 このように,制度上は,病弱教育として,ひとくくりにされていますが,対象となる子どもの実態は,多種多様で,これが病弱教育の難しいところの一つです。

 病弱教育とは,「病弱児」に対する教育のことです。それでは答になっていないと思われる方もいるかもしれません。 そもそも「病弱児」という言葉が一般的ではないからです。ここでは,ひとまず「病弱児」を「病気の子ども」として考えておいてください。    

  学校教育の中で,「病弱」という言葉が使われた時は,特別支援教育の対象となる障害のひとつとなります。視覚障害,聴覚障害,知的障害,肢体不自由という言葉は,聞かれたことがあると思いますが,「病弱」も,それらの言葉と同列に並べられる言葉です。つまり,学校教育においては,制度として「病気の子ども」に対する特別な支援が用意されています。

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